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推断文一部訂正要求のための否定~んじゃない
一部訂正要求の否定日本語構造伝達文法
[ 8-2 ]
この項目は 『日本語構造伝達文法』( 05 版) の第33 章,の内容に基づいています。
今泉 喜一2012 年 11月
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一部訂正要求の否定
① A: きょうは彼,いい時計してるだろ。② B: そうだね。
⑤ A: あっ,ちがう,ちがう。
③ A: 彼,きのう新宿へ買い物に行ってね。④ B: ああ,それで。
e) あの時計は彼が買ったんじゃない。
a) あの時計は新宿で買ったんじゃない。b) あの時計は買ったんじゃない。c) あの時計は新宿じゃない。d) あの時計はきのう買ったんじゃない。
。
A はなぜこう言ったのか? A はBが推断文を作ったと思った。 Bの推断文 「彼はきのう新宿で時計を買った。」
そうじゃない。
A「あの時計を買ったんじゃない。」適切な訂正要求になったか?
AはBの推断文の訂正要求をしたいと思う。
このつもりで
これでは不適切。違和感がある。
では,どう言えばよいのか。推断文への訂正要求に何か規則はあるのか。
一部訂正要求の否定
推断文への訂正要求の規則
彼新宿 時計
で を
kaw-
t-a-
新宿 時計
をkaw-t-a-
彼
で
Bさんが作った(とAさんが思った)推断文 「彼は新宿で時計を買っ
た。」
要素を 1 つ減らすために「きのう」を省略して考える。
一部訂正要求の否定
推断文への訂正要求の規則
彼新宿 時計
で を
kaw-
t-a-
新宿 時計
をkaw-t-a-
彼
で
Bさんが作った(とAさんが思った)推断文 「彼は新宿で時計を買った。」
一部訂正要求の否定
推断文への訂正要求の規則
彼新宿 時計
で を
kaw-
t-a-
の
新宿 時計彼
de o
ka(w)-t-a-
「彼は新宿で時計を買ったの」
Bさんが作った(とAさんが思った)推断文 「彼は新宿で時計を買った。」
一部訂正要求の否定
推断文への訂正要求の規則
の
新宿 時計彼
de o
ka(w)-t-a-
「彼は新宿で時計を買ったの」
Bさんが作った(とAさんが思った)推断文 「彼は新宿で時計を買った。」
一部訂正要求の否定
推断文への訂正要求の規則
の
新宿 時計彼
de o
ka(w)-t-a-
( 事実 )
のar-
deana .k-
「彼は新宿で時計を買ったの」
Bさんが作った(とAさんが思った)推断文 「彼は新宿で時計を買った。」
「彼は新宿で時計を買ったのではない。」訂正要求
「彼は新宿で時計を買ったんじゃない。」
一部訂正要求の否定
推断文への訂正要求の規則何が訂正要求の対象となるか。
彼新宿 時計
で を
kaw-
t-a-
主 体: 彼
客 体: 新宿,時計動属性: 買った
彼が新宿で時計を買ったんじゃない。
選択主語(~が)が最も取り換えやすい。
新宿で彼が時計を買ったんじゃない。新宿で時計を彼が買ったんじゃない。
主題主語(~は)は最も取り換えにくい。
彼は新宿で時計を買ったんじゃない。新宿で彼は時計を買ったんじゃない。
新宿で時計を彼は買ったんじゃない。
訂正要求の対象となりうるもの
一部訂正要求の否定
推断文への訂正要求の規則可換性
可換性要 素
彼は 新宿で 時計を 買った んじゃない。0 3 3+1.5 2
主題語 ・ 話題語
選 択 主 語句 ・ 節客 語
述 語
卓立が置かれると
+ 1.5点
4点3点3点2点0点
新宿では 彼, 時計, 買った んじゃない。0 0 0 2
赤字は卓立表示
点数は経験値
一部訂正要求の否定
推断文への訂正要求の規則
原則1 推断構造内の1要素だけを描写すれば,
( 動属性の描写がないときは「~んじゃない」ではなく,「~じゃない」になる。 )
それが訂正の対象となる。
推断文 「彼は新宿で時計を買った。」
[3] 新宿 (で)じゃない。
[2] 買ったんじゃない。
[3] 時計 (を)じゃない。
( → 渋谷 (で)である。)( → 靴 (を)である。)( → 拾ったのである。 )
一部訂正要求の否定
推断文への訂正要求の規則
原則2 原則1の1要素に動属性(2点)を加えても,その1要素は訂正の対象のままである。
推断文 「彼は新宿で時計を買った。」
[42] 彼 が買ったんじゃない。 [32] 新宿 で買ったんじゃない。[32] 時計を買ったんじゃない。
( → 彼女 が 買った。) ( → 渋谷で買った。)
( → 靴 を買った。)
一部訂正要求の否定
推断文への訂正要求の規則
原則3 主題,話題は訂正の対象にならない( 0 点)。
したがって,原則1,原則2の文に主題,話題を加えても,
推断文 「彼は新宿で時計を買った。」
[042] 時計(は), 彼 が買ったんじゃない。
[02] 新宿 で(は),買ったんじゃない。
[032] 彼(は),時計を買ったんじゃない。
( → 彼女 )
( → 拾った)
( → 靴 )
その1要素は訂正の対象のままである。
[03] 時計(は), 新宿 (で)じゃない。
( → 渋谷 )
[0032] 新宿で(は),彼(は),時計を買ったんじゃない。
( → 靴 )
[002] 彼(は),時計(は),買ったんじゃない。
( → 拾った)
一部訂正要求の否定
推断文への訂正要求の規則
原則4 主語が現れていない場合,
ただし,述語が訂正の対象となる場合は,何か0点のものを置いて
推断文 「彼は新宿で時計を買った。」
( → 拾った)
[03,4.5,2] 彼(は),新宿で時計(を)買ったんじゃない。 0 3 3+1.5 2
( → 靴 )
あるいは主語が主題,話題になっている場合は,卓立( +1.5 )のある要素が訂正の対象である。
述語を引き立てた方が自然になる。
[4.5,32] 新宿で時計(を)買ったんじゃない。 3+1.5 3 2
( → 渋谷 )
[033,3.5] 彼(は),新宿で時計(を)買ったんじゃない。 0 3 3 2+1.5
一部訂正要求の否定
推断文への訂正要求の規則
原則5 選択主語があれば,選択主語が訂正の対象である。
推断文 「彼は新宿で時計を買った。」
( → 彼女)
[0342] 時計は,新宿で彼が買ったんじゃない。 ( → 彼女 )
[4332] 彼が新宿で時計を買ったんじゃない。 ( → 彼女 )
[3432] 新宿で彼が時計を買ったんじゃない。
一部訂正要求の否定
推断文への訂正要求の規則
原則6 構造の要素になっている一部の実体同士の結びつきや,
推断文 「彼は新宿で時計を買った。」
実体と属性の結びつきをひとまとまりの単位(句)として扱いつつ,原則1~5に従う場合もある。
事象主語の場合……新宿で時計を[彼が買った]んじゃない。 原則1 [3] [彼が買った]んじゃない。 (→彼女が拾った)原則2 ( この場合,すでに原則1に動属性の描写が含まれている。 )原則3 [03] 時計は [ 彼が買った ] んじゃない。 (→ 彼女が拾った ) 原則4 ( この場合,主語は事象主語としてすでに出ている。 )原則5 ( この場合,主語は単独で扱えない。 )
論理客語の場合……彼は新宿で [ 時計を買った ] んじゃない。原則1 [3] [ 時計を買った ] んじゃない。 (→ 映画を見た )原則2 ( この場合,すでに原則1に動属性の描写が含まれている。 )原則3 [03] 新宿では [ 時計を買った ] んじゃない。 (→ 映画を見た )原則4 [034.5] 彼,新宿で [ 時計を買った ] んじゃない。 (→ 映画を見た )原則5 [433] 彼が新宿で [ 時計を買った ] んじゃない。 (→ 彼女が買った )
実体同士の結びつき例:「彼の時計」「白い時計」「新宿での時計」
一部訂正要求の否定
推断文への訂正要求の規則
原則7 推断構造が否定構造であり,属性が訂正の対象となっている
推断文 「彼は新宿で時計を買った。」
[033,3.5] 彼,新宿で時計を 買わなかった んじゃない。
彼,新宿で時計を kaw- [ ana.k-Øu=ar- ] i=t-Ø=a-Ø んじゃない。
彼,新宿で時計を kaw- [ ] i=t-Ø=a-Ø んだ。
訂正要求の内容
場合,要求される訂正は動属性を別のものに取り換えることではなく,否定属性 -(a)na.k- を外して肯定にすることである。
一部訂正要求の否定
推断文への訂正要求の規則推断文 「彼は新宿で時計を買った。」
① A: きょうは彼,いい時計してるだろ。② B: そうだね。
⑤ A: あっ,ちがう,ちがう。
③ A: 彼,きのう新宿へ買い物に行ってね。④ B: ああ,それで。
「あの時計は買ったんじゃない。」 と言いたい。
。
時計を買ったんじゃない。
(不適切な表現)
3 2
では,どうすればよいか。「買った」 を訂正してもらいたいのだから,次のようにすればよい。
原則6から 「パソコンを修理に出したんだ。」等になる可能性もある。
原則1から 「パソコンを買ったんだ。」等になる可能性があり,
原則1 [2] 買ったんじゃない。
原則3 [02] 時計は買ったんじゃない。
原則4 [03,3.5] 彼は時計を買ったんじゃない。
[02] 時計,買ったんじゃない。
[03,3.5] 新宿では時計を買ったんじゃない。[03,3.5] 彼,時計を買ったんじゃない。
一部訂正要求の否定
推断文への訂正要求の規則
終わり