Post on 08-Oct-2019
薬剤師から見た在宅医療の実際
平成26年8月19日手稲区在宅ケア連絡会
(社)札幌薬剤師会
北日本調剤株式会社明日風薬局 市川 真知子
在宅医療における薬剤に関する問題点
高齢者が多い在宅医療における特性・問題点
➢加齢による合併症とそれに伴う多剤併用傾向・・・重複投薬相互作用のリスク増大➢視覚・嚥下能力等の身体機能の低下に起因する服薬管理の服薬方法の適切な支援➢腎・肝機能の低下や体成分組成の変化に伴う体内薬物動態の変動や個々人の生理機能に応じた処方・調剤・服薬の管理が必要
その他
服用薬剤の理解不足
副作用の発症
処方内容と食習慣が合っていなかった
薬剤の飲みすぎ
薬剤が飲みにくいため残されていた
薬剤の飲み忘れ
併用禁忌の薬剤
薬剤の重複
薬剤の保管状況
0 10 20 30 40 50 60 70
13.2
46.4
23.3
5.7
10.5
7.9
35.7
1.7
9.1
57.3
%
「後期高齢者の服薬における問題と薬剤師の在宅患者訪問薬剤管理指導ならびに居宅療養管理指導の効果に関する調査研究」 (日本薬剤師会、平成 20年 3月)より
平成26年度診療報酬改定● 基準調剤加算の評価の見直し
(在宅業務の評価、地域薬局との連携、24時間調剤及
び在宅業務を提供できる体制を考慮)
● 在宅患者訪問薬剤管理指導料の見直し
(質の高い在宅医療を提供していく観点から、在宅患
者訪問薬剤管理指導の評価の適正化)
● 無菌製剤処理の推進
(在宅緩和ケア推進、医療用麻薬についても評価拡
大)
● 注射薬、特定保険医療材料の供給体制
● 在宅で使用する衛生材料の供給体制
薬剤師の在宅医療とは
① 本人・家族の希望があること 「世話する時間がないので…」「どんな状態だと、受診させたほうが良いのか…」「何飲んでいるか知らないし、何に注意したら良いか…」
② 他職種からの求めがあること「いろんな薬局の塗り薬がたくさんあるんだけど…」「受診させるべきか判断つかない…」 「私たちに薬のことを聞かれても困る…」「こんど薬剤師さんが来るときに聞いてみたら ? 」「どうも、薬がきちんと飲めていないようだ…」
訪問指示の依頼
訪問薬剤(居宅療養)管理指導に至るパターン
医師の指示型 薬局提案型 ケアマネ提案型 多職種提案型
医師・歯科医師の訪問指示
薬局窓口で薬剤師が疑問視
薬ケアマネから局への相談
医 療 ・ 介多くの 療 介護職、家族からの相談
薬剤師が訪問して状況把握
医師・歯科医師に情報提供 →訪問指示
薬 剤 ( 居 宅 療 養 ) 管 理 指 導 開 始患者の同意を得て、訪問 (居宅療養)管理指導開始
本人・家族、他職種からの希望を再確認
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在宅医療を行う薬局
札幌薬剤師会http://www.satsuyaku.or.jp/
薬局と患家までの距離制限16kmまで(札幌駅~手稲駅10km)
在宅医療受入可能薬局
薬剤師が提供する在宅医療
■ 医療保険
・在宅患者訪問薬剤管理指導
■ 介護保険
・居宅療養管理指導(要介護 1 以上)
・介護予防居宅療養管理指導(要支援 1 ・ 2 )
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在宅医療における患者負担について
医療保険 介護保険
在宅患者訪問薬剤管理指導居宅療養管理指導
介護予防居宅療養管理指導
同一建物居住者以外 650 点同一建物居住者 300 点
同一建物居住者以外 503単位同一建物居住者 352単位
月4回まで(間隔は6日以上)癌末期、中心静脈栄養療法の患者の場合、週2回かつ月8回まで
月4回まで(間隔は6日以上)癌末期、中心静脈栄養療法の患者の場合、週2回かつ月8回まで
麻薬管理指導加算 100 点 麻薬管理指導加算 100単位
利用者負担 法定割合 利用者負担 1割
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高齢者向け住宅・施設における薬剤管理指導( 1)
施設の種類 ① 介護老人保健施設
② 特別養護老人ホーム
③養護老人ホーム
④軽費老人ホーム
(ケアハウス)
配置基準医師 ○ ○ ○ ×
薬剤師 ○ × × ×
在宅患者訪問管理指導料
(医療保険)×
×(○末期癌
のみ)× ○
要介護者等=介護保険
その他=医療保険
居宅療養管理指導費
(介護保険)× × ○
④軽費老人ホームA型( 50 人以上)は医師の配置基準が必要となるため、在宅患者訪問薬剤管理指導料を算定できない。
施設の種類
⑤有料老人ホーム
⑥適合高齢者賃貸施設
⑦認知症対応型共同生活介護
(グループホーム)⑧患者個人宅
配置基準医師 × × × ×
薬剤師 × × × ×
在宅患者訪問管理指導料(医療保険)
○
要介護者等=介護保険
その他=医療保険
○
×要介護者が対象の為
=介護保険適用○
居宅療養管理指導費(介護保険)
○ ○ ○
高齢者向け住宅・施設における薬剤管理指導( 2)
訪問の流れ
①往診後FAXで処方箋が届く (往診に同行する場合も)
② 薬局にて調剤を行う。
③患者宅訪問
服薬指導 残薬確認 お薬のセット 効果・副作用確認 医薬品などの廃棄物処理
⑤報告書作成
⑥医師・担当ケアマネージャーへ提出
グループホームでの在宅業務
・入居する患者の近況報告
・往診同行
・調剤
・服薬指導
薬剤師の具体的な活動内容● 残薬状況、保管状況、併用薬の確認
● 服薬状況が悪ければその改善策の検討
● 使用している薬への理解度の向上
● 体調(食事・排泄・睡眠・運動・認知等)を把握し、薬
の影響をアセスメント
● 服薬について本人や家族に薬剤師が直接確認・説明
● 胃ろう、嚥下困難など服薬に問題のある方の問題を解決
● 服薬方法について多職種と連携し検討
● 複数の薬をひとつにまとめる
● 服薬カレンダー、医薬品使用補助具等の利用・販売
● 衛生材料の供給
在宅医療における薬剤師の役割
薬剤師が関与し、患者にきちんと服薬していただくことにより、
患者の病状、ADL、QOLを改善または維持する。
【1】服薬状況が悪い場合、その理由を探り、改善のための対策を行う。(服薬支援)
【2】薬が患者さんの病状、ADL、QOLに悪い影響を与えていないかアセスメントする。
薬 薬 剤 会 ) よ り在宅服 支援マニュアル(日本 師 )よ り
【1】服薬状況が悪い場合、その理由を探り、改善のための対策を行う。(服薬支援)
飲まない(飲めない)理由 対応策
①薬の整理がつかなくなったため、 飲めない
残薬や併用薬を、重複や相互作用、併用禁忌等に留意し整理する
②何の薬か理解していないため、 飲まない
薬効を理解できるまで繰り返し説明し、その理解を助けるための服薬支援をする。
③薬の副作用が怖いため、飲まない 副作用について、恐怖心をとりつつ対応策を話し合い、納得して服薬できるようにする
④特に体調が悪くないため、飲まない。(自己調整)
基本的な病識や薬識を再度説明し、服薬意義を理解してもらう
⑤錠剤、カプセル、または散剤が飲めない
患者ごとの適切な服用形態の選択と医師への提案。嚥下ゼリー、オブラート、簡易懸濁法などの導入提案
在宅医療における薬剤師の役割
薬剤師が関与し、患者にきちんと服薬していただくことにより、
患者の病状、ADL、QOLを改善または維持する。
【1】服薬状況が悪い場合、その理由を探り、改善のための対策を行う。(服薬支援)
【2】薬が患者さんの病状、ADL、QOLに悪い影響を与えていないかアセスメントする。
薬 薬 剤 会 ) よ り在宅服 支援マニュアル(日本 師 )よ り
多職種連携によりアセスメント可能
食事 排泄 睡眠 運動
食欲味覚
嚥下状態口腔内清掃口渇吐き気胃痛など
尿の回数、状態
便の回数、状態など
睡眠の質時間
日中の傾眠不眠の種類
など
ふらつき転倒歩行状態めまいふるえ
すくみ足手指の状態
麻痺など
これらのキーワードから患者の体調を定期的にチェックし、薬剤の効果・副作用をアセスメントする。 このほか認知領域や環境(独居、同居、施設)等も把握
「薬剤師による食事・排泄・睡眠・運動を通した体調チェック・フローチャート」 (日本薬剤師会/高齢者・介護保険等検討会)より一部改編
無菌調製について
● 無菌調剤室の共同利用が可能となった
→無菌製剤処理加算について、無菌調剤室を共同利用する場合でも算定可能。
・医療用麻薬も無菌製剤処理加算の対象に含めた。
・電解質製剤及び注射用抗菌薬について、保険医療機関の医師が処方できる処方箋に基づき保険薬局で交付することができる注射薬として対象を拡大。
薬局を介した在宅医療に必要な衛生材料の提供
訪問看護ステーション
医療機関
薬局患者
画 書訪問看護計 書訪問看護報告書
訪問看護指示書
薬 剤 管 理 指 導在宅患者訪問 管理指導衛生材料等
訪問看護 指示
費用
費用請求
在宅療養管理指導等
画 書 : 必 要 な 衛 生 材 料 と 量 を 記 載訪問看護計 書:必要な衛生材料と量を記載実 績 を 記 載訪問看護報告書:使用 績を記載
ーシ ョ ン か ら のステ ションからの内 容 に つ い て 判 断 し 、報告 容について判 し、
必要量を患者に提供する。
地域包括診療加算/地域包括診療料
<24 時間開局薬局> ・保険薬剤師が当直を行う等、保険薬剤師を 24 時間配置し、来局した患者の処方せんを直ちに調剤できる体制を有していること。
・当該保険薬局が客観的に見て 24 時間開局していることがわかる表示又はこれに準ずる措置を講じること。なお、防犯上の観点から必要であれば、夜間休日においては、夜間休日専用出入口又は窓口で対応することで差し支えない。
<24 時間対応薬局> ・保険薬剤師が患者の求めに応じて 24 時間調剤等が速やかに実施できる体制を整備していること。
・当該保険薬局は、当該担当者及び当該担当者と直接連絡がとれる連絡先電話番号等、緊急時の注意事項等について、原則として初回の処方せん受付時 (変更があった場合はその都度)、患者又はその家族等に対して説明の上、 文書(これらの事項が薬袋に記載されている場合を含む。)により交付していること。