日本の林業にとっての 森林認証と SGEC 2008 年 7 月 18 日 森林認証( SGEC...

Post on 19-Dec-2015

237 views 2 download

Transcript of 日本の林業にとっての 森林認証と SGEC 2008 年 7 月 18 日 森林認証( SGEC...

日本の林業にとっての森林認証と SGEC

2008年 7月 18日森林認証( SGEC)に関する勉

強会全木連 藤原敬

藤原敬• 社団法人 全国木材組合連合会常務理事

– fujiwara@zenmoku.jp

• SGEC 理事・専門委員• ウッドマイルズ研究会代表運営委員• ホームページ「持続可能な森林経営のた

めの勉強部屋」管理人– fujiwara@t.nifty.jp

論旨• (地球環境の現時点と、環境に優しい木材の課題)– 木材は持続可能な社会(低炭素社会)の主役になる資格をもっているが、その動きについていっていない

• (緑の消費者パワーと環境負荷の見える化)– 主役になるために、エコマテリアルとしての木材を「見える化」する道具が、森林・木材認証・合法材証明やウッドマイルズ

• ( SGECの目指すもの)– SGECは、日本の消費者を対象とした、効率的に信頼性のある森林・木材認証システムづくりに挑戦

C h a l l e n g e s o f a C h a n g i n g E a r t h — J u l y 2 0 0 1 C h a l l e n g e s o f a C h a n g i n g E a r t h — J u l y 2 0 0 1

Source: C. D. Keeling and T. P. Whorf; Etheridge et.al.; Barnola et.al.; (PAGES / IGBP); IPCC

南極の氷柱における CO2 濃度と今後100年間における大気中の CO2 濃度の予測

(BP 1950)

予測 (2100)

現在 (2001)

CO

2 濃

(pp

mv

)

Vostok Record  南極ヴォストーク基地の記録Law Dome Record  南極ロードームの記録Mauna Loa Record  ハワイ マウナ・ロア観測所の記録IPCC IS92a Scenario   IPCC によるシナリオ

南極のヴォストーク基地の記録• 南極の氷床をボーリングし3千m以上の氷柱を採取し測定すると、過去42万年わたって毎年の二酸化炭素濃度が分かる

• 過去の二酸化炭素濃度は 180ppmvと 280ppmvの間を変動しておりその値が気温の変動と同調している

• 20世紀になってからはじめてその変動幅を離脱し急速な上昇を始めている

出典– 小野有五、「科学」71,9月号、(2001)「アムステルダム宣言と地球環境科学の新時代」

– Prof Berrien Moore III “ Challenges of a Changing Earth”( 2001) http://www.sciconf.igbp.kva.se/OSC_Plen_Pres_Moore.html

「循環社会」と対比する20世紀の「大量消費社会」

人間社会

生産 流通 消費

再資源化

環境化石エネルギー 温室効果ガスなど

化石資源 廃棄物

遺産資源

ワンウェイ社会

加藤三郎「循環社会」創造の条件

世界のエネルギーの将来

0

200

400

600

800

1000

1200

1400

1600

1800

1990 2025 2050 2075 2100

太陽起源の水素

間欠的再生産可能エネルギーバイオマス

原子力

水力・地熱

天然ガス

石油

石炭

化石資源

バイオマス

10^12MJ

IPCC第二次評価報告書(バイオマス促進ケース)

木材利用の消費エネルギー

CO280,900kg

CO219,600kgCO2

103kg

エコマテリアルとしての木材。他の建材より製造時のエネルギーが少ない。

中島史朗、大熊幹章「温暖化防止行動としての木材利用の促進」 (1991) 木材工業

CO255kg

「循環社会」とは何か

人間社会

生産 流通 消費

再資源化

環境自然エネルギー(バイオマス、太陽光など)

温室効果ガスなど

再生可能資源

廃棄物

木材:数少ない再生可能資源

木材:近未来でもっとも有望な自然エネルギー

木材:生産過程の省エネルギー性

加藤三郎「『循環社会』の創造条件」より

木材は、①再生可能資源、②有望な自然エネルギー、③生産時の省エネルギー資源、という三つの点で循環社会の主役となる

木材をたくさん使うことが地球環境のためになるか?

• グリーン購入法を巡る林野庁・木材業界と環境庁の論戦

• 環境庁:「木材をたくさん使うことが地球環境の保全になるという国民的なコンセンサスはない。違法伐採木材が問題となっている。」

木材は再生可能か?という問いに答えられていない。

木材は再生可能か?

• Yes,  but…– 戦後輸入された熱帯木材は持続可能な形では開発されなかった。

• 木材が持続可能な社会の主役になるには「持続可能な森林経営」から産出された「合法的な木材」であることが明確になる必要がある。

• そのための手法二つのアプローチ– 持続可能な森林管理のための国際条約– 森林認証・ラベリング =市場を通じた解決策

「低炭素社会・日本」をめざして福田ビジョン 6/9

• はじめに• 日本の長期・中期目標

– 2050年までに現状から 60%-80%の排出削減

– 2020年までに現状から 14%削減

• 具体的な政策– 革新技術の開発と既存先進技術の普及

– 国全体を低炭素化へ動かす仕組み

• 排出量取引/税制改革/見える化– 地方の活躍– 国民が主役

木材の環境指標の総合化の背景• 福田ビジョンの「見える化」

–国民一人一人が持続可能な社会の実現に向けて賢くそして責任ある行動をとることが必要

–そのためには CO2排出量の見える化によって、消費者が的確な選択を行うための情報を提供することが重要

–カーボンフットプリント・フードマイレージ制度が試行

• 木材の場合は CO2固定と排出の見える化を目指すべき→木材二酸化炭素固定指数

0.00020.00040.00060.00080.000

100.000120.000140.000160.000180.000

1999200020012002200320042005200620070100200300400500600700

入場者数参加団体

エコプロダクツ展来場者推移

1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007前年比

参加団体 228 305 350 370 416 453 502 550 632110

%

入場者数 47.449

67.838

88.604

100.483

114.06124.8

29140.4

61152.9

66164.9

03109

%

千人社・団体

「緑の建築基準」の動き• 二酸化炭素排出量の約4割は建築物関係• 海外で進む「環境負荷の少ない建築物評価」

–英国 BREEAM–米国 LEED–持続可能な供給源からの木材の利用を評価–近くでできた木材を評価

• 我が国でも(建築物総合環境性能評価システム=CASBEE)

建築物の環境負荷低減性能LR-1エネルギー

1.建物の熱負荷抑制      2.自然エネルギー利用 3 施設システムの高効率化  4.孤立的運用

LR-2資源・マテリアル

1.水資源保護

1.1 節水1.2 雨水利用・雑排再利用

2.低環境負荷材料使用

2.1 資源の再利用効率2.2 持続可能な森林産出木材2.3 健康被害のおそれが少ない材料2.4 既存躯体などの再利用2.5 非最終処分予想量2.6 フロン・ハロンの回避

LR-3敷地外環境

1.大気・地下水・土壌汚染防止 2.騒音悪臭の防止3.風害・日照害の抑制      4.光害の抑制5.温熱環境の悪化改善     6.地域インフラの負荷抑制

CASBEEの活用• 名古屋市、大阪市、横浜市、京都市の各自治体では、一定規模以上の建築物を建てる際に、環境計画書の届出を義務付けており、その際に CASBEEによる評価書の添付が必要

• 500程度の評価事例が蓄積• 住宅用の CASBEE-homeの開発が進んでいる

住友林業の木材調達方針

2007年 - 住友林業グループ    「木材調達理念・方針」 6月発表

Sumitomo forestry Group

[Timber Procurement Philosophy & Policy]

was established in JUNE `07

2010年 3月 ⇒ 合法性100%を目指す

MAR `10 Confirming the legality of all

traded timber

積水ハウスの木材調達ガイドライン

                                                                            

                          

                                                           

               

                                                           

               

 

                                                                   

       

グリーン購入パワーとラベリング

• 木材が循環社会の主役になる鍵は、消費者がどれだけ支払うか–消費者側のグリーン調達の条件は整いつつある(グリーン購入法、 CASBEE)

–後押しする行政と業界と市民の取り組みが必要• エンドユーザーサイドから信頼のできる木材についての要請が高まっている

• 森林認証、合法材認証、県産材認証などで消費や需要者との連携を深める必要

森林認証とは• 森林所有者が独立した認証機関に任意に森林の審査を依頼し、認証者が明確に定義された基準に合致しているか決定するものであり、森林所有者が認証森林のものとして販売すれば、最終消費者がそれを認識できるように、貯木場から最終販売地点までの製品の管理を含むもの– Chris Elliott et al.(1996) Certification of Forest

Products Issues and Perspectives

森林認証の歴史世界 先進国 日本

1990 世界で初めての認証

1993 FSCの発足1994 SFI(米国)発足1996 CSA基準採択1998 PEFC(欧州)発足1999 IFIR相互承認提案2000 日本初の FSC認証2003 世銀 QACC提案 SGEC発足

Forest Stewardship Council/ Sustainable Forest Initiative/ Canadian Standards Association/ Pan European Forest Certification SchemeInternational Forest Industry Round Table Questionnaire for Assessing the Comprehensiveness of Certification Schemes / SystemsSustainable Green Ecosystem Council 緑の循環森林認証

世界の森林認証マップ (2007年末)

FSCForest Stewardship Council

(森林認証協議会)93年創設、 本部ボン

欧州 16カ国旧 PEFC SFI米国

CASカナダ

チリ

Programme for the Endorsement of Forest Certification Schemes

PEFC(森林認証制度保証機構)

ブラジルオーストラリア

SGECMTCC

ELI

86.0百万 ha対前年比 1.09

その他 5.4百万ha

対前年比 0.89197.4百万 ha対前年比 1.02

認証面積合計288.9百万 ha対前年比 1.04

ll

日本の森林認証面積

0

200000

400000

600000

800000

1000000

2000 2002 2004 2006 2008

SGECFSC

714千 Ha

279千 Ha

994千 Ha

世界の認証森林面積( 2007/12)

  地域全森林   認証森林1000ha 2006 2007 全面積比 前年比

  ① ② ③ 100x /③ ① ③/②

アフリカ 635412 2479 2877 0.45 1.16

アジア 571615 7754 7262 1.27 0.94

  内日本 24868 613 697 2.80 1.14

欧州 1001394 96266 107322 10.72 1.11

中北米 705849 155792 159354 22.58 1.02

南米 831540 9519 1992 0.24 0.21

オセアニア 206254 7017 9973 4.84 1.42

合計 3952063 278826 288780 7.31 1.04

Country / Area

Total Land

Forest

Area   Annual change rate

1990 2000 2005 1990-2000 2000-2005

1000 ha 1000 ha 1000 ha 1000 ha %

1000 ha/yr

%

1000 ha/yr

%

アフリカ 3,030,974 699,361 655,613 635,412 21 -4,375

-0.7

-4,040 -0.6

アジア 3,177,142 574,477 566,601 571,615 18 -788

-0.1

1,003 0.2

欧州 2,297,719 989,320 998,091 1,001,39

4 44 877 0.1 661 0.1

中北米 2,272,501 710,790 707,514 705,849 31 -328 n.s. -333 n.s.

南米 1,783,770 891,036 852,796 831,540 47 -3,824

-0.4

-4,251 -0.5

オセアニア 856,414 212,514 208,034 206,254 24 -448

-0.2

-356 -0.2

合計 13,418,518

4,077,498

3,988,649

3,952,063

29 -8,885

-0.2

-7,317 -0.2

FAO世界資源調査 2005の結果

FSCの基準概要のカテゴリー

• 法律と FSCの原則の遵守• 所有権・使用権及び責務• 先住民の権利• 地域社会との関係と労働者の権利• 森林のもたらす便益• 環境への影響• 管理計画• モニタリングと評価• 保護価値が高い森林の保存• 人工林

経営の社会的責務

森林の多面的機能マネジメントシステム

FSCの認証基準と森林施業計画

経営の社会的責務

森林の多面的機能

マネジメントシステム

文書による管理計画の策定実質的な経営責任者の配置→一番大きなハードル

法律の遵守、所有権の明確な規定→殆どクリアされている事項→対外的に説明できるチェックリスト森林のもたらす便益、環境への配慮→実態はクリアされている→施業計画認定基準+ α

FSCの背景と特徴 日本の制度へのヒント

途上国の熱帯林を前提にした設計

輸出産品海外の消費者へメッセージ伝達の必要

基準の中身ハードルは高くない

手続き複雑で高いコスト

法律遵守所有権の明定 etc

地域基準の策定外部評価者FSCの同意 etc

日本の消費者向けの

簡易で質の高い制度の

可能性と必要性施業計画制度とのリンク自治体との連携

他の制度との相互乗り入れ

SGECの森林認証審査基準の考え方

主目的:健全にして持続可能な森林の維持管理水準の向上

現行の森林施業計画制度を活用

基準の中で、森林生態系機能の維持、環境機能の増進を重視

国際性を具備:モントリオールプロセスの基準指標、環境マネジメントシステムの導入

SGEC創設の2つの背景• 国際的な認証制度の特徴

–熱帯林の情報を欧米の消費者に伝える仕組みである

• そのために、情報の信頼性を確保するための仕組みが必要

• 途上国の国家機関が十分な管理能力をもっていないことが前

• SGECの特徴–日本消費者に向けた効率的な仕組み–行政との連携

まとめ• 木材は持続可能な社会(低炭素社会)の主役になる資格をもっているが、その動きについていっていない

• 主役になるために、エコマテリアルとしての木材を「見える化」する道具が、森林・木材認証・合法材証明やウッドマイルズ

• 特に国産材の需要圧力が増している現時点で、国産材にとっても適切な管理を示す仕組みづくりが必要

• SGECは、日本の消費者を対象とした、効率的に信頼性のある森林・木材認証システムづくりに挑戦

地球環境時代に森林管理を考えるこのサイトは、私たちが住む地球の環境と共生できる森林管理・経営の実現のために、森林に係わる研究者と市民の交流の場となることを、また行政と関連業界の意見・提案の交換の場となることを目指しています。http://homepage2.nifty.com/fujiwara_studyroom/

資料室入室  ID:  パスワード :